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 <コラム>ツルのひと声


<コラム>ツルのひと声では、青年部、組合関係者、各分野専門家などからのコラムをお届けします。
まじめな内容、くだけた内容なんでもありノンジャンルですので肩の力を抜いてお読み下さい。

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「石材職人は、意外に多趣味?」
松岡石材店 松岡計夫(中央会青年部 理事)

ギター・ジーンズ 山口県石材加工協同組合青年部の松岡です。

 この度、中央会ホームページリニューアルに伴い、コラムに掲載する原稿の依頼を受けました。通常ですと、自分の仕事について書かれる方が多いかと思いますが、第1回目から型破りで申し訳ありませんが、趣味について書かせて頂きたいと思います。

 わりと多趣味で、車・ギター・ジーンズとありますのでまずは車から。

購入後11年間私の相棒となっています“HONDABEAT”今では家族も増え、さすがに2シーター(乗車定員2名)では乗る機会が限られますが、形・走り共に好きで、これからも乗り続けたい車です。

 続きましてギターですが、プレイよりもコレクションが主となり、今では私より年上のギターが多くなっています。1950年代のギターは機械加工より手加工の部分が多く、同じ年代の物でも若干の個体差がありますが、当時の職人が精魂込めて作った物が、50数年たった今でも現役で使え(ヴァイオリンに比べるとまだ歴史は浅いですが)形にしても昔から完成されており、加工技術・デザイン性等見習うべき点があります。

 さて、ジーンズですが、これは“ヴィンテージコレクション”ではなく、今の仕事についているからこそ出来る趣味です。墓石の字(○○家の墓とか)を彫る機械(サンドブラスト)でデニムの色を抜いて行き、ジーンズに文字やイラストを彫っています。この手法はすでにヴィンテージ加工等で使用感を出すために利用されていましたが、文字やイラストはちょっと人目を惹きますよ。

技術的にも難しく、あまり長く加工すると糸切れを起こしますし、加工時間が短いと境目がはっきり出ません。私も何本か糸切れをしてしまいました。でも思い通りに出来上がった時は嬉しいものです。

 いろいろと趣味がありますが、趣味の方でも横のつながりが出来ればと思っていますので、同じ趣味をお持ちの方がいらっしゃいましたらお気軽に声を掛けて下さい。

  思い立ったら即行動!!何事もチャレンジ精神でこれからも行動したいと思います。勿論仕事優先で!!
松岡石材店 松岡計夫(中央会青年部 理事)




「灼熱の」鹿児島紀行 〜うま芋焼酎ショッピングの巻〜 掲載2005.3
Beauty Factory Maruzen スタッフ 三隅"salu"耕治)


  聞いて呆れる話かもしれないが、お盆休みに鹿児島へ焼酎を買いに行った。
高速道路は僕のジープではチョット走行が困難なので3号線をひたすら下った。
あのクソ暑い8月の半ばに『エアコン無し!』『車内平均温度35〜8度!』『総走行距離約855キロ!』『総走行時間27時間!』という過酷な過酷な末恐ろしい「何度も引き返そう…」と本気で考え直す程の旅をしてきた。
  『鹿児島行き』の話の発端はこうだ。行きつけの焼鳥屋(鳥よし)の主人と店でいつものように焼酎についてああだこうだと談義しながら…「やっぱり現地(鹿児島)へ直接行き自分の目で見て買うのが一番ですな。」…ということで主人が現在取引している酒屋へ直接僕が行き、目で見て確かめ、より良い芋焼酎を注文する…と言う事になった。(実際まだ主人もそこには行った事がないのだ)『ヨーシ!それなら俺が代わって行ってやろうじゃないか』と話がついた。

不安ぎみの出発】
  実際のところ『条件』は厳しい。僕の盆休みは3日で、三日目の昼にはこちらに戻りたかった…が、それを達成するには「仕事が終わり次第出発!」というナントもキツイ話になるのである。
  晩飯を焼鳥屋で食い、主人と携帯電話番号交換をし、二人で酒屋の場所をデッカイ地図で調べた…が結局分からなかった。「住所と電話番号が分かるから何とかなるだろう」と主人と二人で無理矢理納得。(大丈夫かな…たどり着けるかな…)「それでは行ってきます!」と言って勢いよく店を出た。
(ちなみにその日、焼き鳥代を払い忘れた…やべえ…。)
クーラーボックスにおしぼり、ポカリスエット、お茶。バックにはタオル、着替えその他を入れこんで旅の支度はササッと完了!
  10時出発!小野田市辺りで本気でやっぱり引き返そうと思った…。
いきなりそう思った。なぜならその時点でありながら3号線と10号線のどちらのルートを行くのかもまだ決定してなかったのだ。
「果たしてこのポンコツ車で鹿児島までたどり着けるのだろうか?」「イヤイヤその前に俺の体だってもつのか?」しかも「一体何時間かかるのだろうか?」 さまざまな不安をウンニャ!と断ち切り闇雲に走った。関門トンネルを初めて窓を開けて走った。「うわあ!暑いし臭いしウルサイ!」エアコン無しだから窓を閉めると更に暑いのでそのまま走った…。空気が悪いので鼻と口をタオルでふさいだ。今までで一番長い関門トンネルであった。
  なんやかんやで分かりやすいのでとりあえず3号線を下ることにした。
福岡付近で12時過ぎていたがそんなことよりも暗闇の中、目の前で光る数本の雷がひっきりなしにビカビカいうのが怖かった。雷なんて普段全然怖がらない質だがやっぱり「不安な旅路」での数本のカミナリ様はやはり不気味であった。

【苦肉の福岡不時着】
丁度そのころ「やはり一気に鹿児島走るのはやめて福岡の友人の家に転がり込むことにしよう」と勝手に考え始めていた。
  「そうしよう!」と決めた後すぐに友人に電話したら「おう!久しぶりだな!ところでお前、鹿児島に何しにいくと?」と言う。
「焼酎を買いに行くんだ」と答えたら「お前馬鹿だよ!スッゲーかっこいいことするなー!」と笑いながら「今夜はウチに泊まってけよ」と快く誘ってくれたのですぐに向かった。
  友人のアパートは福岡中心の大濠公園の近所にある。
   久しぶりに涼しく快適なスペースに落ち着いてしまったのか、仕事が終わってすぐに直行したのがいけなかったのか…なんだか急に眠くなった。
  しかし!とにかくビールが必要であった…一本目はシュルっと飲んだ。
「ウマイ!」ここ最近で最高とも言える喉ごしスッキリな味だった。
それから友人が「ドドン!」っと3本のうまそうな焼酎を出してくれたので「これはこれは」「まっどうぞどうぞ」「アッそうですか、それじゃ」と時間を忘れて朝4時近くまで飲んでしまった。
「あう!明日は鹿児島まで行かなければならぬが、はたして俺は何時に起きて何時に出発しよう…」と少々不安になりつつ寝てしまった。
  深夜に友が作ってくれた『梅肉柚子胡椒ショウガ&ドッサリ鰹節そーめん』はうまかったな…という夢を見つつ「ガバ!」っと目を覚ましたのが朝7時。
「まだ7時か…」と思いつつ「何!もう7時!」と思い返し、さっさと友の家を出た。方向音痴なので3号線にたどり着くのに1時間位クルクル走り回ってやっとの思いで福岡を脱出!いざ鹿児島! 車を走らせてたら福岡の友人からメールがあった。「なんだろう…?」「メガネとコンタクトケース忘れとるよ。気をつけてな」…その時点でまた帰りに福岡に寄らなければならぬ理由が出来てしまった。

【アッツイアツイ道のり】
  「暑い…とにかくアツイ…。アツイのだ。ウウ…信号が赤だ、止まるぞ。
あー止まるとさらに暑いじゃないか…。オイ!今何度なんだ?」温度計を見る。
「うわぁ38度じゃないか!そうだ!ウチワがあった!ウチワはいいなぁ。」パタパタ扇いだら何となく涼しい。…ような気がした。
「あ!信号が青だ。動かなきゃ。」あまりの暑さに動作が鈍いのがハッキリと分かる。
『睡眠3時間』+『二日酔い』+『クソ暑さ』が程良くとけあって実に不快なハーモニーが絶妙に襲ってくる。そのうち本格的に頭がガンガンしてきた。
「アアそうかこれが噂に聞く『熱中性』なのか。」などとそんな時にぼんやり考えながらそれでも運転し続けた。途中何度も『道の駅』等で休憩した。
  クーラーボックスに入れてきたおしぼりで顔を拭いては目を覚ます。
  その度に幾度と無く「やはり引き返そうか…」という弱気を振り払った。
…例えるならパチンコで負けてるときに…「ええい!もういいや!」と金をドンドンつっこみ、首までドップリ浸かって「もうどうにでもなれ!」という感じだろうか…。(分かるかな…)
  単純にいえば「乗りかけた船には乗ってしまえ!」なのであった。
  道中、気になったのがネコの交通事故ネコ死体を何回も見たが偶然にも寝てる恰好が自分の寝るときのスタイルにそっくりだったので何だか不吉な予感がしたのでそれを見る度、気を引き締め、運転に気をつけるようにした。
  〜ありがとう!ネコ君達、君たちの死は決して無駄では無いよ…〜
  シフトを握る左手がふやけてきた。すごい現象だ…普段から汗をダラダラ流すタイプではないが左手だけがまるで長湯に浸かったようにふやけた。
ふやけた手でシフトを持つと痛いのだ。「誰か運転中に左手がふやけた方、お知らせ下さい。そのことについて語りながら飲みましょう」
  熊本に到着…の時点でかなりの達成感はあったが標識をみてガクンと来た。
「鹿児島→202キロ」「202キロか…あと何時間かかるのだろう?」急に元気が無くなってしまった。しかしそれでも突っ走るしかないのだ。
  阿久根市の『道の駅』で休憩。日曜日ということもあって人は多い。
道の駅の中は涼しい。ホントに涼しい。極楽であった。
「ああずっとこのままで居たい」…汗もスッと退いてしまうほど涼しかった。
朝からサンドウィッチしか食べてないが空腹では無かった…が、体のために何か口に入れようと食堂に行った。
  この辺の名産なんだろうな…『キビナゴの天ぷらそば』を食べた。
お土産コーナーでも『キビナゴ』が目立つ。他にアジ、鯖等さすがに海産物が多い。「帰りにここで土産を買って帰るか…」
  何時に着いたかは覚えてない。本当の話、かなりの疲労でその時の記憶が断片的にしか残ってないのだ。
「だが!確かに鹿児島に到着したのだ!芋焼酎王国にやってきたのだ!」一人でかなり「ヤーヤー」と叫んだ。涙は出ませんでした。
【ワタシハ記憶喪失者】
  地理が全然わからず鹿児島中央駅付近をクルクル回っていた。仕方がないので適当なビジネスホテルに吸い込まれるようにチェックイン。
「俺は今確かに鹿児島にいる…しかし何しにやってきたんだろうか?」「はて?」そんな時、職場の仲間や友人から無事の確認のメールが届くが、返信もしなかった。返信出来なかったのだ。気力体力知力の数値ががゼロ。
心身ともども『衰退衰弱ダメ人間』に成り果てていた。
  汗と疲れを洗い流すため風呂に入ってみた。風呂から上がると「シャキーン!」となぜだか分からぬが記憶が蘇ってきた!「そうだ!俺は焼酎を買うために遙々やって来たのだ!思い出したぞ!」…まるで記憶喪失者が頭を「ガーン!」っと打って昔の記憶を取り戻したようだった。

【鹿児島自慢親父】
  とりあえず!鹿児島駅に行く!フラフラと小雨の中、駅へ歩いた。
「せっかく来たのだから美味しいものと旨い酒をいただきに行こう。」…と、先程ホテルのフロントでもらった鹿児島市内の簡単な地図を見た。
ホテルのフロントで『天文館』という繁華街に行けば良いと言うので駅員さんに聞いたら市電に乗ればたどり着けるらしい。
(市電とは路面電車のことである。僕は結構好きで『ちんちん電車』と今でも僕はそう呼ぶ)
  乗り場で気の良いオッサンに鹿児島市内の地理について質問すると、ニコニコしながら、両手を高々と手を広げて鹿児島の街について誇らしげに語りだした。
「よっぽど鹿児島の街を好きなんだろうな…。自分が逆の立場だったら
  自分の地元(宇部市)をここまでは言えないよな…。自慢するトコもそんなに無いもんな…。せいぜい常盤公園のカッタ君ぐらいかな。」 そう思ったら何だかこのオッサンがヤケにうらやましくなった。

【ちんちん電車で…】
  ふる里自慢オッサンに別れを告げ、路面電車に乗り込む。要領が分からないので座ってすぐに隣の男に声をかけた。
「お金はいつどこで払うのですか?そしていくらなのでしょうか?」すると男は気さくに答えてくれた。
「お金は下車する時です。料金はどこまでいっても160円ですよ。」「あっそうなんですか。それにしても鹿児島は雨、よく降るんですか?」 と僕が聞いた。
「イエイエ、今日はめずらしく降ってますが毎日暑い日の連続ですよ。
  どちらからやってきたのですか?まさか『長渕ツヨシ』の桜島ライブを見にきたんです?」とその男が言う。
「いや、僕は違う目的でやってきました。それにしても珍しく雨とは、俺も運が悪いなあ…。せっかく山口県からやって来たのに。」 …宇部も雨降ってるのかな… 男が興味げに聞いてきた。
「じゃあ一体何しにこんな遠くまでやって来たのですか?」
「いやあ…、大した事じゃないですよ。焼酎を買いにチョット…」
  男はニコっとして、「それなら。」と「何かメモするものあります?」 と言うのでササッととメモ用紙とペンを渡した。
「鹿児島駅側から『谷山』方面に向かって20分くらいかな…そしたらダイエーがあってコジマ電気があって…ええと、ココです!ココ!」…と『こせど酒店』という市内でも有名な酒屋を教えてくれた。
  他にも男は僕が宇部の焼き肉屋『じゅうじゅう亭』のキムチ担当の青年に聞いて「是非鹿児島に行くなら…」と F A X までわざわざ送ってくれた焼き肉屋『肉のヨコムラ』の場所も詳しく熱心に教えてくれた。
  さらに男は「どこか良い店はないか?」と家に電話して聞いてくれたり終いには店(彼のお勧めの)まで道案内までしてくれた。
「それでは」と別れ際に写真まで撮ってくれた。
  男はもともと市内の人間ではないらしいが、旅人にここまで面倒ができるというのは自分がもともと『よそ者』だったから…なのだろうか。
  彼のおかげで僕は無事最初の一軒目にたどり着けた、と同時に僕も地元で『よそ者』に対して「できるだけの手助けはしてあげよう」という気持ちがもてるようになった。本当にありがとう。
【ウルトラと豚の角煮殿】 最初に入った店は、黒豚・薩摩料理専門店『酒仙 吉兆庵』だった。黒豚、地鶏、黒毛和牛タン、地タコ、水イカ、そしてオリジナルの桜島溶岩焼が主なメニューだった。僕は一人で何軒か行くつもりだったし、夜は小食なのでここの店では一品食べて出ることにした。
  ビールを飲み飲み、迷ったあげく特に大好きな『豚の角煮』を注文した。
突き出しは確か『タコごぼう料理』だった。その時点でビールは飲み干されていたので焼酎を注文することにした。
  名前と値段で選んだ芋焼酎『花と蝶』…まったく最近流行の飲み口、喉ごしスッキリ、香りもさわやかな…まあ言ってみれば『クセのない芋焼酎』だ。
その頃、睡眠時間3時間ということもあり急激に酔いが回ってきた。
「そうなのだ、今日の俺は『ウルトラマン』のように体力的、精神的にも『対焼酎分解能力』にも限界点が非常に早いのだ。心して厳選に厳選を重ね、選ばれたものだけが俺のお腹に収まる事が出来るのだ、『雑魚』はいらん! 大将の首をできるだけ捕ってやる!」 そんな時、大物『豚の角煮』殿が参上した。二切れだった。その上に野菜がのってありカラシが添えてある普通の角煮だった。そしてガブリと食べた。
一人じゃなかったら大きな声で「これは!うみゃー!」と吠えたかったほど結構なお味だった。まさに「我、将軍の首捕ったりー!」状態である。
  さすが鹿児島黒豚、しかもここは鹿児島(当たり前)。2個目を大切にチビリチビリ食べて味わった後、料理長に向かって「僕は豚の角煮が好きでイロイロ食べましたが今までで最高の角煮でした」と言った。そして「また必ずいつか食べさせて下さい。」料理長はニッコリ笑って「また鹿児島に遊びに来て下さい」と送ってくれた。

【気のいい鹿児島ポン君】
  たかがビール一杯、焼酎ロック一杯で相当酔ってしまった僕はふらつきながら天文館をさまよってたら、すぐに『ポン引き』(以下ポン君)が忍び寄ってきた。
「お兄さん、オンナ、オンナのいる処行きませんか?」とささやく。
「はあ?見りゃわかるだろ、俺は全く興味ないよ」とブスっと答える。
  (あとから考えたが、みりゃ分かるだろ?は不適切な言葉だった)『ポン君』はそれでもあきらめず食いついてきた。
「どこから?何しに来たんですか?」とか適当なことを聞いてくる。
しつこいので「焼酎飲みにきたんだよ!焼酎!女はいらん!どこか良い店知らんか?教えてくれ、まずは地鳥が食べたいな。」と言ったら、「ん〜、それならこっちです。」このポン君はまだ若い。22〜3才だろう。
  連れてこられた店が焼鳥屋『ゆ』。変な名前だし別に店構えも普通だ。
少し酔いを醒ましたかったので焼酎じゃなく瓶ビールを飲みながらメニューを見る。地鶏を食べようと思ったが「何!『牛特大ジャンボ串』だと!」迷わず方針を変え『牛特大ジャンボ串160g』を注文!
  店のキープ棚を見てたら圧倒的に芋焼酎『三岳』『島美人』『伊佐錦』、そして何故か下町のナポレオン『いいちこ』がチョコッとあった。
さすがに芋焼酎王国、芋だらけであった。
  続いて見渡すとナントこの店にはお笑いの『柳沢しんご』、ウっちゃんナンちゃんの『南原』、歌手の『渡辺まちこ』等のサインとポラロイド写真があった。「へえ…こんな店にねえ」と一人うなずき、ビールを飲んでた。
「お待たせしました。」と『牛特大ジャンボ串』が現れた。串の長さが30cm はあるだろう。160g の超ボリューム串はただ大味なだけの代物だった。まあ僕は大きな牛肉が好きなのでそれも良しとしてそれだけ食ってすぐに店を出た。
  すると先程のポン君が外で待っていた。???「どうでした?」とポン君が得意げに聞いてきた。
「いや、地鶏はやめて牛を食った。まあまあやね」と素っ気無く答える。
「そうですか…じゃ!次は何にします?」と何やらまるで子分のように言ってきたので(まるで水戸黄門様に仕える八兵衛みたいだなコイツ…)「俺をいろいろ店に連れて行って、あんた、何らかのメリットがあるんか? それとも全部あんたの系列店じゃないの?」と少々意地悪に聞いた。
「とんでもないです!全然関係ないですよ!良い店紹介したいだけですよ」 と本気?で答えてきた。
それでも意地悪に「ははーん、さては鹿児島人としての意地?」 と軽くながして「よし!焼酎飲みたい!」と案内させた。
  (なかなかこの八兵衛は良いヤツかも知れぬわ)と思った。
※ ポン君=八兵衛

【 焼酎&カクテルバー R O C K W E L L S (ロックウェルズ)】ロックウェルズ
《TEL》099-222-2213
《営業時間》18:00〜4:00
《山之口町9-29第2江戸吉ビル》
焼酎を必要とする俺をポン君が連れてきたのが『ロックウェルズ』だった。
ポン君が本当に俺を連れて行きたかったのは『焼酎天国』という所だったがそこは休みだった。
  手彫りの看板が目印の『ロックウェルズ』は店内は手造り。カウンターに個室(2〜10名)があり、照明も程良く光るムードの良い店であった。
  県内焼酎を中心に400銘柄以上、その他カクテル、焼酎カクテルを飲ませてくれる店だ。僕はカクテルには全く興味がないが確かにここは『焼酎の宝庫』だ。卒業写真のように実にお行儀良く並ぶ焼酎達…誰も彼もが主役だ。まったく目がチカチカするほど眩しく見えた。
なぜか分からないが妙に気分が高潮した!「ウオーーーーリャーー!」(圧倒的な焼酎の量を目前に心の中はワッハッハと高笑いしていた) 気の高ぶりを隠し、サッと席に着く。少し酔いが醒めてかけていた。
『オクラとワカメの酢の物』がでてきた。疲れた体を酢の物が癒してくれた。
「お飲物は何にしましょう?」とマスターが気さくに聞いてきた。
「そうですね、飲んだことないヤツにしよう。」と言い、何杯かラベルで選んで飲んだ。まあ旨かった。当たり前のように旨かった。
  俺のしょうもない質問にマスターは真剣かつ、たまに笑顔で答える。
マスターと焼酎談義。そのうち隣の客も話しかけてくる。みんなで語らいながら時間は流れる。酔いも結構まわった頃、マスターにこう言った。
「この400本以上ある焼酎の中で一番僕に飲ませたいヤツを下さい。」「コレです。」と悩むこともなくサッと出してボトルをかざした。
『6代目 百合(ゆり)』
『6代目 百合(ゆり)』…鹿児島沖に浮かぶ甑島(こしきしま)の焼酎。
  ※甑島…薩摩半島からフェリーで1時間20分、正確には東シナ海沖。
「なぜ、これを僕に?」と低い声で聞いた。
「この焼酎をつくっている人達が僕は大好きなんです。」とマスターはニッコリと答えてきた。
「なぬ?」なんだか分からぬが、まずチョット一口…。
「ん!」ススーッと今度は多めに飲む…。「ゴクン…。」そして喉で飲む。
「こ、これは!!マスター!何ともバランスの取れた旨さ!芋焼酎の 旨み、程良い芋の香り、そして口当たり…その後のスッキリとした感じ、 まさにこの焼酎『百合』は全て良さをまんべんなく兼ね揃えているじゃないですか!」声を高ぶらせて言った。
   芋焼酎飲酒歴も幾年になるが今までには無い感動だった!僕も今まで芋焼酎をかなりの種類飲んできた。しかしこれはなんだか違う!この定価一升1750円の焼酎はまさにトップクラスの味ではなかろうか! 値段では無い。『ロックウェルズ』で飲めば『百合』は一杯400円。
(実際、後に某インターネット値段を調べたら八千円位で出回っていた。
当然のように 品切れであったが…。)焼酎は一般庶民、または労働者の酒だと思う。ところが今は空前の芋ブーム。
  某酒造会社が某銘柄に限り販売をやめた。(生産をやめたのではない)理由はこうだ。(多少の言葉の表現の差はご了承下さい) 

  「人気沸騰のあまりに某有名銘柄が定価何千円にもかかわらず蔵元の手の届かないところで何万円という値段にふくれあがり競売にかけられ挙げ句の果てには抽選販売までされているという。焼酎とは本来、そんなお酒ではありません。もうその時点で焼酎ブームは終わりました。」…以下略 

  まったく同感だ。僕が焼酎を購入する限度額は2000円までだ。
何年も歳月をかけ『古酒』として熟成された『沖縄の泡盛』等は別格として普通に一升瓶で売られている焼酎なんぞに何万円は断じて出せない出さない!(この考え方はあくまでも僕の考え方なので聞き流して下さい) 飲み終えた後、ジーンとして決めたことがあった。
「今日は『百合』で終わろう。」そう!もうその日は何も口に入れたくなかった。歯磨きもしない。今日一日を『百合』で締めくくりたかったのだ。

【長州対決!】
「マスター、お勘定!」とスッと席を立った。
「ところでお客さん、わざわざ鹿児島まで何しに来たのですか?」
  とマスターが最後に聞いてきたので「『薩長同盟』を結びにまいりました!」と、冗談半分大きい声で言った。
「何!?あんた『長州』の人間か!どこなんか?」と店の奥からデカイ声。
「はい!俺は宇部です!」どうやら向こうは夫婦みたいだ。
「よーし!飲もう飲もうこっちにおいでよ!」と誘ってきたので「ほんじゃ」
  とつい先程お勘定を済ませたばかりなのにまた飲む羽目になった。
  下関出身だというその夫婦と三人で飲み始めた。かなりの量飲んだ。
ほとんど記憶がおぼろげだ。他の焼酎は飲まずに徹底して『百合』だけを飲んだ。
そして下関夫婦にも『百合』を飲ませた。
  まさか鹿児島で山口県民と一緒に飲めるとは夢にも思わなかったから相当はしゃいだ。かなりうれしかったのだ。その時電話番号交換までしたのだが結局次の日も電話しなかった、疲れて電話どころではなかったのだ。
  それにしても鹿児島の夜は暑かったが本当に楽しい時間だった。
これだけアツイ人々、アツイ酒に出会えたのだから無理もない話だった。
2回目のお勘定の時に「マスター、また必ず来ますから…」と僕の『ギターピック』を渡した。自分でも何故だか分からないが、また必ずここへやってくる…。鹿児島にやってくる、と誰かと約束したかったのだろう。「マスター、必ず来ますから…」ともう一度言って店を出た。

【東川酒店】
  目が覚めたら9時だった。「まだ九時…、もう九時!!チェックアウトが10時だから、あと1時間しかない…がまだフラフラで頭が痛くて…。」 ポカリスエットをがぶ飲みし、テレビをつけたらオリンピックのサッカー『日本−イタリア』をやってたのでボンヤリ見てたらアッという間に時間が過ぎてしまい、あと15分で支度しなければならなかった。
  ホテルのフロントでこの旅の『本当の目的地』、『照国町』を教えてもらった。以外に鹿児島の街は単純だった。すぐに到着した。
東川酒店  その店は照国町『照国神社』の近所にある。
  小さな酒店だった。店の前に路上駐車し、店を覗いたら奥から小柄で人なつっこそうなおばさんが出てきた。「ああ、いらっしゃいませ」「あのう、焼酎買いに来たんですが…。」と二日酔いの俺が言った。
「悪いねえ…昨日まで休みだったんだけど焼酎は今あまり無いのよ、注文はしてるんだけどねえ…。」と残念そうに言う。
「そうですか。」さほど在庫の量、種類も無さそうに見える。続けて「山口県から来ました。旨い焼酎が飲みたくて。」「はあ?山口から?個人で?…まあ…。ちょっ、ちょっとお父さん! 山口からお酒を買いに来たんだって!」と主人を呼んだ。
  奥から「ムスッ」とした顔の親父が出てきた。「あ。こんちわ」と短い挨拶を交わし「ふうん。焼酎をね…山口からねえ…?個人でね」「業者なら分かるが、個人で買い付けに来たのはあんたが初めてだ。
  しかし残念なことに見てもらえれば分かると思うが在庫が今乏しいんじゃ。本当にこれしか無いんだよ。まあ今ここにあるのも充分良い焼酎なんで買って帰ってちょうだい。」と小声で言った。
  6本買った。金が残り少なくなっていたが「どうせなら」と買ってしまった。親父がプラスチックの一升瓶ケースにいれてくれた。
ジープの荷台に載せながら「こんな車で来たら疲れるだろうの…」と「クスッと」小さく笑った。「まあ帰りは気をつけて…」
  帰り際に「お兄さん、これをあげよう」とおばさんがくれたものは昨晩あれほど飲んだ芋焼酎『百合』の『蔵人語録』というパンフレットだった。『百合』の製造風景、こだわり、酒造会社の紹介など詳しく写真付きで記してあった。そしてページを開いて指をさして「あのね、お兄さん今日はこの『百合』は無いけど欲しかったら注文したらええからね。電話しなさいよ」と言ってくれた。
何度も「帰りは気をつけて…」と言われ「また来ますよ」別れを告げた。

【ああ桜島】
  東川酒店の親父に『城山公園』の場所を教えてもらった。『西郷隆盛像』の先が『城山』でそこに公園と展望台等があるのだ。
  親父が「西郷さんの先に行ったらあるよ…」と言っていた。
そこで気になったのが鹿児島の人達は共通して『西郷隆盛』に「さん付け」して『西郷さん』とか『せいごーどん』と親しみのこもった呼び方をする。
例えば山口県出身の『伊藤博文』にたいしても『伊藤さん』とは呼ばない。
土佐の人間だって『坂本竜馬』を『坂本さん』って呼ばないはずだ。
  あのどデカイ銅像、「さん付け」、どちらから考えても『西郷隆盛』は鹿児島県民から親しみ深く愛されているのが分かる。
(決して伊藤博文、坂本竜馬が愛され尊敬されてないとは僕は思ってません)『城山公園』から『桜島』が一望できるのだ。僕の車はカギが不十分なので先程購入した宝物(焼酎)を盗まれないようにバスタオルで焼酎ケースを覆って駐車場から『城山展望台』へ歩いた。
展望台から見ても桜島はデカかった。
  展望台から見ても桜島はデカかった。「久しぶりだなあ…」恐らく24〜5年ぶりだろうか、それでもモクモクと白い煙を出して「俺が桜島じゃ!なんか文句あるのか!かかってこい!」と言わんばかりにドシンと構える桜島はナンとも勇ましく見えた。しばらく見とれてしまった。
  丁度その頃、行きつけの焼鳥屋(鳥よし)の主人から携帯電話が鳴る。
「東川酒店には行った?どうだった?焼酎は良いのはあったか?あれば あんたの目で見て店の人と話して良〜く選んで焼酎を注文してウチに『代引き』で 送るようにしてくれ。」「アッそうか…俺が『鳥よし』の焼酎を注文して帰るのだった。」「今から俺(鳥よし主人)が酒屋に電話するから、今からまた酒屋に 戻ってくれ。アッそれからそれから東川さんによろしく言っといて頂戴ね!」

【ずっと3号線なのだ】
  …ってことでまた東川酒店に戻って焼酎を注文。それから帰路についた。
この時すでに12時過ぎていた。酒屋の親父が言っていたが実に鹿児島の道はシンプルで分かった。すぐに3号線にのり、九州を北上する。
  行きしに休憩した阿久根市の『道の駅』でお土産を購入。行きよりも帰りの方が楽だった。行きは「何時間かかるのか、あとどれくらい距離があるのか」全然見当もつかなかったが、帰り道は違う。目印や目安がハッキリしているので「あとどれくらいでここまで行ける…」という何となくだが目星がつくのだ。
  ひたすら3号線。3号線を北へ向かって走りさえすれば帰れるのだ。
  休憩も度々にした。とにかく疲れて集中力が無くなったら休憩。ここまできて事故でもしたら旅が台無しだ。道沿いのスーパーで無料のクラッシュアイスを拝借してクーラーボックスに入れ、飲み物をキンキンに冷やす。
  左手がふやけるのも慣れた。慣れたけどチョット痛かった。35度という暑さには…やはり慣れるものではない…が、がんばった。
  結局、福岡の友人宅に着いたのが12時過ぎ。友人の手料理で夜更けまで飲んだ。『アゲマキ貝のバター醤油焼き』が実に旨かった。福岡に友達がいて本当に良かった。もしいなければこの旅は実現できなかったかも知れない。
  昼前に起床。二人でなぜだか昼食に焼肉を食いに行ったドンブリ2杯ご飯 を食べた。すっごく満腹だ。「それじゃまた合おうぜ」とお別れ。
  休憩はほとんどしなかった。「もう少しだ」と思って突っ走った。
小倉あたりで見慣れた風景、建物が現れた時、ほんとに涙が出そうになった。
だが、「今はまだ小倉じゃないか!まだ家にたどり着いてもないのに涙なんか流すものか!泣きたければ宇部に無事たどり着いた時思う存分泣けばいい。
と本気で涙をこらえた。」 暑くてうるさい関門トンネルをくぐり山口へ帰ってきた。家に着いたのは一体何時だったのだろう。良く覚えてない。「俺は帰ってきた…」 芋焼酎など近所の酒屋にいくらでも売っている。しかし僕は鹿児島で買いたかった。いや、鹿児島で買うことに意義があるのだ。辛いことも多かったがそれ以上の楽しみ、喜び、そして感動があった。良い経験になったと思う。
  次の日、『鳥よし』に行ったら僕が注文した芋焼酎達がキープ棚にズラリと並んでいた。どの銘柄も良い面構えだ。
  鳥よしの主人が俺を見て「ニヤリ…」とした


【編集後記】
鹿児島紀行は100%実話である。100%実話だからこそこんなに今までには無い長い長い文章になってしまった。
この旅行は絶対に文章として残すつもりだった。
  旅行中起こった全てを書き残しておきたかったのだ。
だから『ノート』と『ペン』と『メモ用紙』をいつも持ち歩き、ちょっと気になったことがあればすぐにメモ用紙に走り書きをしたり、少し時間があればノートに行程時間等を細かく書く。
そんなことをしたのは初めてだった。
  しかし今となってはそれがクセになってしまい、メモ用紙にはいつもその時思ったり、ちょっと面白かったことを書くようになった。その時、その瞬間を何らかの形として残す手段は沢山ある。
写真、携帯にだってカメラは内蔵されてる。ビデオ、他には…作文?詩?短歌? まあどの手段をとっても、後から見て「ニンマリ」としたり「しんみり」したりできるってやっぱり形として残しておいた方が『よりリアルに』『より鮮明に』できますよね?
  時々読み返して見て『これは人には見せられない!』という文面もあるんですよ…(^^;)。
だから僕はメモ帳の1ページ目に『ひみつのノート』と書いてあります^^;(余計怪しかったりして・・・)
  話は戻るが『鹿児島紀行〜』は鹿児島から無事帰還して1ヶ月後、つい最近書きました。文章を完成させるのに約10時間?くらいかかったと思う。
さすが『鹿児島までの道のりを感じさせる』ほど長い時間だった。
  1ヶ月たつとさすがに「あの時自分がこう言った。」「相手がこう言った」とかをはっきり思い出せなかった。しかしできるだけ忠実に書きたいので走り書きしてあるノートと『にらめっこ』して無理矢理に思い出した。
  本当はすぐに書けばいいのにすぐに書かなかった自分が悪いのだが、自分の中では「いつになっても詳しく書ける」という自信があった。
それほど身体に、脳裏に、目に、そして心に今もなお焼き付いているからだ。
□編集制作 三隅 耕治■□


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